一橋倫政

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2010年 一橋大 倫政〈経済分野〉 解答・解説

政府の少子化対策について、様々な根拠が考えられる。そのひとつに「子どもを公共財とみなす」という考え方がある。この考え方を説明しなさい。その上で、政府の少子化対策の必要性について論じなさい。(250字)
※掲載されている問題は全て許可を取っています。








公共財とは何か

出題範囲はミクロ経済学です。まず、公共財の定義から考えていきましょう。
公共財とは非排除性非競合性を併せ持つ財のことを指します。山川の用語集を確認したところ、これらの説明は省かれていましたが、今年のセンター試験に出題されているほどの基本的な用語なのでしっかりおさえておきましょう。


非排除性・・・対価を支払うことなく財を消費することができる、という性質
非競合性・・・複数の消費者が同時に同質の財を消費することができる、という性質


厳密に分類するならば、非排除性と非競合性を併せ持つ財を純粋公共財、片方のみを持つ財を準公共財と呼びます。その中でもとりわけ、非排除性のみを持つ財をコモン財、非競合性のみを持つ財をクラブ財と呼びます。これらもあわせておさえておきましょう。


純粋公共財の例・・・国防、空気など
コモン財の例・・・共有資源(水など)
クラブ財の例・・・映画など


以上の公共財の定義が「子ども」にどのように対応するのか、ということを考えれば良いわけです。市販されている問題集の解答にほ非排除性、非競合性の片方しか触れていなかったり、どちらにも言及していないものがありますが、250字という記述量を考えても、ここでいう「公共財」は純粋公共財という意味で捉えるのが自然です。

子どもは公共財

では、子どもはいかなる点で公共財的な性質を持つのでしょうか。まず簡単に思いつくのは将来的に働くことで財やサービスを生み出す、という点です。次に、社会保障制度の安定です。日本のように賦課方式を広く採用している国においては、子どもが増えれば一人当たりの社会保障負担は少なくなります。以上の点で子どもは社会全体に正の外部性をもたらします。社会全体に便益を及ぼすため、この点で非競合性を持つと言えます。また、子どもを持たない人を排除することができないため、この点で非排除性を持つと言えます。これで子どもが公共財であることの説明はできました。

政府の少子化対策の必要性

次に、政府による少子化対策はいかなる理由で正当化されるか、を考えます。公共財は、市場原理に任せておくと、フリーライド(ただ乗り)が発生します。フリーライドされると分かっている財サービスは、自ら供給しようとは考えません。(このブログも知識なので公共財ですが・・・)その結果、公共財は過少供給となります。このような場合に政府の介入によって財サービスを最適配分する必要性が生じます。では、具体的にどのような方法で政府が介入するのか、を考えます。公共財であるからといって政府が直接供給するとは限りません。民間企業に補助金を出して、委託して供給を行うことも考えられます。同様にして、補助金を出して子どもの最適供給を達成する方法が現実的であると考えられます。


以上の要素を250字にまとめれば満点近く貰えるはずです。この問題はレベルはそこまで高くはありませんが、学べる点も多く良問だと思ったため記事にしました。解答例の下に補充問題を載せておきます。

〈解答例〉

3公共財とは、複数の消費者が同時に消費できる非競合性と、対価を支払わず財を消費できる非排除性を持つ財である。子どもは、賦課方式の社会保険制度下で制度の維持という便益を社会全体にもたらすため、非競合性を持つ。また、子どもを持たない者でも便益を享受できるため、非排除性を持つ。以上から子どもは公共財と言える。子どもの便益にはフリーライダーが発生し、市場原理に任せておくと、子どもの供給は過少となり少子化に繋がる。そのため、政府による補助金等によって、供給を最適にし、効率的な資源配分を達成する必要がある。(250字)




補充問題
日本は米軍に支援をすることで、公共財を提供していると言える。どういうことか、説明しなさい。